さてさて・・体の変化だけではなく、行動面も妊娠中から子育てに都合のよいようにかわってきます
妊娠中期くらいから、夜間2-3回おきるようになるのも、
夜も何度もお乳を欲しがるわが子に授乳をするための準備なのです。
産後すぐから、お母さんと赤ちゃんは一緒にいて、
頻繁に授乳をしていれば母乳を作る準備は進んでいきます。
その後も欲しがるたびに欲しがるだけ授乳することで母乳の分泌はふえて維持されるのです。
発展途上国では母親と子どもはいつも一緒にいて、一日15回以上授乳するのも普通です。
これが哺乳動物であるヒトとしての母親と子どもの自然なかたちなのです。 あら不思議・・おっぱいは赤ちゃんのための特効薬
お産によって、病原体のいない子宮内から病原体がたくさんいる外の世界へ、
酸素の少ない環境の子宮内から酸素が豊富な子宮外へ赤ちゃんは飛び出していきます。
母乳中には生きた細胞・免疫物質・抗感染物質など児をまもる物質がたくさん含まれています。
また、母乳の成分はその時々に周囲で流行している感染症に対する特効薬を与えてくれます。
赤ちゃんがウィルス感染を合併したときの
母乳には白血球、マクロファージ、TNF-α、ラクトフェリンなど
赤ちゃんをウィルスから守ってくれる成分が増加しています。
母乳で育てられている乳児にはダイナミックな免疫防御が働いているというわけです。
なぜこのようなことができるのでしょうか?
① 赤ちゃんに感染した病原体は母親の体内にも入っていきます
② 腸にあるリンパ組織の働きをたかめる
③ 活性化されたリンパ球は形質細胞(免疫グロブリンを作る細胞)にかわって乳房に向かう
④ 赤ちゃんに感染した病原体に対する特異的IgA抗体(病原体とたたかってくれる免疫)が母乳中にでていく。
このように、赤ちゃんはお母さんにしか作れない特効薬をもらうことになるのです。
母乳で育った児は予防接種後の抗体陽性率や
母親からの移植腎の定着率が高いことも報告されており、
母乳に含まれる受動免疫以外の効果もたくさんあります。
つまり、母乳で育てることは児のからだの仕組みそのものを
自然なかたちー人間としてあるべき姿に導いてくれるのです。
それだけではありません。
ヒトがヒトとして育っていくために必要なものは母親の母乳のなかにたくさん入っています。
将来の生活習慣病にかかる危険性を下げる鍵も母乳にあります。
生後早期に与えられた栄養は、その児の今後の身体そのものを変える力をもっています。
身体だけではありません。
母乳で育ったヒトは53歳になっても認知能力が
人工乳で育てられたヒトよりも高いとも報告されています。
生まれてすぐから母乳で育てることは、“ヒト”として育てるために必要なことなのです。
母親と児は母乳で育てるように成り立っていることを良く知っておいてください。